12月8日、AKB48はグループ結成20周年という大きな節目を迎えた。日本武道館で4日間にわたって行われた記念コンサートは、過去と現在が交差する特別な時間となり、7日の最終公演では前田敦子をはじめ、板野友美、高橋みなみ、小嶋陽菜といった初期メンバーのレジェンドたちが集結。会場は、かつての熱狂を知るファンの歓声に包まれた。

翌8日、前田は自身のインスタグラムに、総合プロデューサーの秋元康氏や多くのOGが並ぶ集合写真を投稿。その一枚は、まさに「歴史の証言」とも言える豪華さで、コメント欄には「俺の青春でした」「思い出を呼び戻してくれてありがとう」と、感謝と郷愁があふれた。
しかし、祝福ムード一色の中で、思わぬところにスポットライトが当たる。前田の投稿を取り上げたネットニュースを引用し、「板野友美の目ヤニがすごい」とつぶやいた、いわば独り言のような投稿が拡散されてしまったのだ。些細で無遠慮な指摘だったが、これに反応したのが、当の板野本人だった。
板野は自身のXでその投稿を引用リポストし、「ねーちょっと待ってw ラメ」「確かにわかるよ?でも、だとしたら両目から凄くない?www」と軽やかに切り返し、目ヤニではなくメイクのラメだと即座に否定。怒りではなく笑いに変える対応に、場の空気は一転した。
20周年という記念すべきタイミングで起きた、ちょっとした“事件”。それはSNS時代ならではの距離感と、元トップアイドルの懐の深さを同時に映し出していた。過去を懐かしむだけでなく、今もなお話題を生み、反応一つで空気を変えてしまう――AKB48という存在の影響力は、20年を経ても健在であることを、思わぬ形で証明した出来事だった。
板野友美が、いわば“通りすがり”のような一般ユーザーの投稿を拾い上げ、即座に反応した背景には、AKBファンであれば思い当たる過去の出来事がある――そんな見方が広がっている。
AKBグループの歴史の中では、些細な一瞬が本人の意図とは無関係に独り歩きし、長く記憶されてしまった例がある。象徴的なのが、2018年の選抜総選挙で1位に輝いた元SKE48・松井珠理奈のスピーチだ。本来であればキャリアの頂点として語り継がれるべき場面が、鼻の中に何かが見えたという指摘によって、ネット上で過剰に消費され、ネタとして定着してしまった。栄光の瞬間が、本人にとって不本意な形で記憶されてしまった苦いケースである。
今回の件も、もし「目ヤニ」という言葉が一人歩きすれば、板野自身が意図しないイメージを背負いかねなかった。だからこそ、火が大きくなる前に、笑いを交えながら自ら否定するという“即時対応”を選んだのではないか――そんな分析をする声もある。冗談めかした言葉の裏には、長年第一線で注目を浴び続けてきたからこその危機管理意識が透けて見える。近年は、誹謗中傷に対して芸能人が黙って耐える時代ではなくなりつつある。お笑いコンビ・ハライチの岩井勇気が、心ない指摘をした一般ユーザーに対し、法的措置も辞さない姿勢を示したように、表現の自由と責任の境界線が改めて問われている。
今回の板野のケースが示したのは、SNSでは「独り言」のつもりでも、その相手が実在する以上、決して閉じた空間ではないという現実だ。冗談の一言が、本人の目に触れ、思わぬ形で返ってくることもある。祝祭の空気に水を差さないためにも、そして自分自身が不用意な当事者にならないためにも、芸能人に向けた言葉は一度立ち止まって選ぶ必要があるのだろう。


