『NHK紅白歌合戦』初出場も欠場に「表向きの理由はインフルエンザ」も出場停止署名は14万筆を超えていた

年の瀬の恒例行事であるNHK紅白歌合戦が、今年は思いがけず重たい文脈も背負うことになった。初出場が決まっていた韓国の4人組ガールズグループaespa。その中国人メンバー、ニンニンが体調不良により欠場し、3人での歌唱となることが29日に発表された。表向きの理由はインフルエンザ感染による療養だが、その背景には、ここ数週間続いてきた議論の影が色濃く残る。

画像は紅白歌合戦公式サイトより引用

発端は2022年、ニンニンがファン向けアプリに投稿した一枚の写真だった。きのこ雲の形をしたランプを「かわいいライト」と紹介した投稿が、原爆を想起させるとして批判を浴びた。所属事務所は今回の欠場発表にあわせ、この投稿についても改めて謝罪し、「特定の意図はなかった」としながらも、配慮を欠いた表現だったことを認めている。

この問題はネット上の議論にとどまらず、国会でも取り上げられた。NHK側は、原爆被害を軽視・揶揄する意図はなかったと事務所から説明を受けていると答弁し、当初は紅白出場に変更はないとの姿勢を示していた。一方で、出場停止を求める署名は14万筆を超え、世論の分断を浮き彫りにした。被爆者団体が「対応しない」と静観の構えを見せたことも、対照的な印象を残している。今年の紅白は「戦後80年」が一つのテーマになるとみられ、司会者2人がともに広島出身という点も象徴的だ。だからこそ、原爆という記憶の扱いには、例年以上に繊細さが求められる。ニンニンの欠場は体調不良という現実的な理由によるものだが、その決定がさまざまな文脈を抱え込んで受け止められているのも事実だ。

音楽番組は本来、楽しみや祝祭の場であるはずだ。しかし、過去の記憶とどう向き合うか、グローバルに活動する表現者がどんな想像力を持つべきかを、静かに突きつける出来事にもなった。今年の紅白は、歌の向こう側にある「歴史」と「配慮」について、視聴者一人ひとりが考える時間にもなりそうだ。

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